赤い公園 『猛烈リトミック』
猛烈リトミック (2014/09/24) 赤い公園、KREVA 他 商品詳細を見る |
私が音楽の故きを知らないだけでしょうか。だとしてもこの1枚には確実に新しい音が鳴っていると思います。ポップとロックの真ん中を行く新たな道を開拓しているような音楽。そしてこれは、ついこのあいだ、くるりの『THE PIER』からもらった感覚と似ているかも知れないとも思いました。今の、というよりは、少しだけ未来のスタンダード ( になり得る音楽 ) を聴いているような感覚。
1曲目のこれ↑を聴けば分かる通り、バンド史上一番開けていてポップで世間への浸透力もあるであろうアルバムなのに、良い意味でまとまっていないというか、収まりきっていない。もう誰にも止められない、収拾がつかない感じ。溢れている感じ。何が?赤い公園というバンドのポテンシャルやエネルギーそれ自体が、でしょうか。
だとしたらそれは凄いことで、蔦屋好位置さんや亀田誠治さんなど多くの名プロデューサーを迎えながら、ある意味でちゃんと影響されて、ある意味ではちゃんと影響されなかったということなのでしょう。良い意味で、外から手を加えられても染まり切らなかったということ。だから、溢れているのはプロデューサー陣が引き出したバンドの良さだけじゃない。美しく整えようにも枠からはみ出してしまうくらいの「赤い公園らしさ」なのだと思います。
『THE PIER』に続いて心底震えるような、というか実際に震えたアルバムでした。超かっこいい。最近は「サイダー」がお気に入りです。爽快。あとは最初に聴いた時からもうずっと、ラストナンバー「木」にやられっぱなし。プロデュース誰だろう?とクレジットを見れば、セルフプロデュース… 米咲ちゃん。あなたの力は底知れないよ。すごい。すごく好きです。同世代、絶賛支持します。
2010年代前半のベストトラック(邦楽)を選びます
という音楽だいすきクラブの企画に参加します!〆切ぎりぎりセーフ?アウト?でした。あぶないあぶない…
自分ルールとして1アーティストにつき1曲(でないと3アーティストくらいで30曲埋まってしまいそうだったので)とだけ決めて、あとは「絶対にこれ!」という曲も「選べるわけがないから客観的な視点もちょっとプラスしてこれ!」という曲も入れました。ただ、その縛りの緩さが悩みの種になったわけでして(汗)あれもこれもと脳内論争をして結局決着をつけられなかったのが数曲あり、それらは今回は入れないことに… それで中途半端な27曲になりました。順位付けはしていません。というか決められませんでした。並びは単にアーティスト名の読みの五十音順です。ではでは。
・赤い公園「交信」
「風が知ってる」、最新曲「NOW ON AIR」とかも大好きだけど、ピアノの単音ラインの素敵さにノイジーな音像が混ざってくるギャップが印象的で、やっぱりこの曲。
・ASIAN KUNG-FU GENERATION「マジックディスク」
・avengers in sci-fi「Two Lone Swallows」
日本的な情緒のある詞とメロディーをこの疾走感のなかで、という。アベンズのキラーチューンとはまた違う趣かも知れない曲だけれど大好き。
・andymori「CITY LIGHTS」
出会いの曲なので。ほとんど転がるように駆け抜けていく勢いの良さったら。
・OGRE YOU ASSHOLE「ロープ」
オウガ、まだフェスでしか観たことがないのですが、ワンマンに行ってどっぷりとあの音の渦に飲み込まれたいものです。
・木村カエラ「Sun shower」
とても幸せでキラキラとした曲。ベリテンライブ'12にて、まだ名前がない曲と紹介されて、ひと聴き惚れ。きっと晴れの野外の解放感のなかで聴けたから、いっそう響いたのです。
・きのこ帝国「海と花束」
分厚いギターの重なりの上で神秘的にも響く歌声。光射す新曲「東京」と迷ったけれど、おそらくこれまでと次作のアルバムとを橋渡しするような大事な1曲な気がして、こちらに。
・9mm Parabellum Bullet「カモメ」(Strings version)
聴いた時に「これは意外!」と思って、ここから逆に9mmにハマるきっかけになった曲。これ以外の曲だとオリジナルもいいのだけど、MTV Unplugged のアコースティックアレンジの方をよく聴いちゃいます…
・クリープハイプ「ラブホテル」
クリープハイプの歌は自然と口ずさみたくなる心地よさがあるので、尾崎さんは素晴らしいメロディーメイカーなのだと思うけど、うっかり親の前で口ずさんでしまうと怪訝な顔をされそうな歌詞が多いので気を付けています… 音・歌ともに湿度高めな感じがして、夏ソングが似合うバンドだなと。
・くるり「There is (always light)」
発表&発売されたばかりだけど滑り込みで入れちゃう。音楽周辺のことに首を突っ込んでいった結果、本当に自分は音楽が好きなのか?と迷路にハマりそうになっていたところでこの曲に出会えてよかった。
・サカナクション「ユリイカ」
「アイデンティティ」や「夜の踊り子」や「ルーキー」や「ミュージック」がランクインするのだろうなと思いつつ、そっとこれを選びます。音の置き方が個人的にとても気に入っていて、実はライブよりもヘッドホンやイヤホンで、ひとり聴きたい曲。それも冬のしんしんと寒い日に。
・syrup16g「生きているよりマシさ」
こちらも聴いたばかりだけど、これからも聴き続けるであろう曲なので。
・cero「Contemporary Tokyo Cruise」
・高木正勝「きときと‐4本足の踊り」
この並びにはイレギュラーだけど(それにルールからやや外れてるけど…)めちゃくちゃ好きなので。映画「おおかみこどもの雨と雪」のサウンドトラックから。台詞がほとんどない、画と音楽で見せるシーンに流れる曲。
・チャットモンチー「満月に吠えろ」
『変身』を発売したあとのツアーに行きました。ぐるぐるとパートチェンジをしながら演奏する2人は本当にかっこよかった。言葉で直接的には言わないまでも、決意のような覚悟のようなものが伝わってくる音でした。
・トクマルシューゴ「Decorate」
リズムに楽器に、自由で飄々としているようで、でもセンチメンタルな響きも含んでいたり。MVも好きです。
・南波志帆「こどなの階段」
作曲:サカナクション山口一郎、作詞:ベボベ小出祐介。こういう話題がないとなかなかアイドルには手が回らない自分ですが、これは気持ち良くてよく聴いてます。
・the HIATUS「Shimmer」
管楽器群がぶわっと風を吹かせているよう。ハイエイタスはアルバムごとに色が変わるのでどうにでも選びようがあって迷いました。
・BUMP OF CHICKEN「ray」
今年のツアーで「天体観測」や「ガラスのブルース」に劣らず確実にライブでひとつのハイライトを描く、大団円を結ぶような曲になっていたのでこれを。ライブのまさにその時間をぎゅっと反映する「宇宙飛行士への手紙」、個人的に大好きな「セントエルモの火」、思い入れのある「HAPPY」などなど迷いました。
・People In The Box「ダンス、ダンス、ダンス」
イントロの流れに乗ってついつい聴いてしまいます。途中、音が詞の世界観に寄っていくように不穏になるというか、揺らぐ瞬間が好きです。
・Base Ball Bear「short hair」
ベボベと言ったら夏で、夏の去り際にはこの曲だと思う。けれど、アルバム『二十九歳』の「光蘚」〜「魔王」のコンビや、feat.REYMESTERの「THE CUT」などなどありますよね(迷)
・星野源「夢の外へ」
源さんもどうにでも選びようが… で、これかなぁ。歌い方が「くだらないの中に」の頃と現時点とのハイブリッドな感じがしますね、いま聴くと。<僕は真ん中をゆく>ってこの人が歌うから信用できるのです。単純に、元気をもらえます。
・bonobos「あなたは太陽」
12分45秒の生命の賛歌。あたたかくて、どこかおどけてもいて、ふいに歌われる<あなたの未来に祝福を/圧倒的な祝福を>の力強さ、心強さたるや。
以上です。相変わらずの幅の狭さ… だけど、やっぱり音楽好きです。好きな曲を振り返って並べて聴くのは楽しかったのと同時に、もっと色々な音楽に触れるというか、感動の種類を増やしていけたらいいなぁと改めて思いました。選び抜けずじまいになってしまった数曲もあとでリストにしようかな。
くるり 『THE PIER』
- アーティスト: くるり
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2014/09/17
- メディア: CD
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しばしば、その参照される音楽の圧倒的な多様さや幅広さが「旅」に例えられるくるり。ですが『THE PIER』、私なんぞは古今東西のここはどこ?今はいつ?と困惑しながら何とか音を追いかけて、やっと追いついたと思った時には最後の曲、なんて1枚でした。出発地点は遥か昔の事だったような、それでいて一瞬の出来事だったような。音に連れられてめくるめく旅をさせてもらったアルバム。
これほど最後までわくわくが持続するフルアルバムは久しぶりだったなぁ… 最後に来て「まだ終わらないで!」と願うように強く思ったのは、ライブではよくあるけれどフルアルバムに対しては初めての感覚かも知れません。音楽のジャンルや歴史に疎い自分には詳細を分析しきれませんが、肌感覚でもわかるほどに詰め込まれた音の情報量。それは全体を通しても楽曲それぞれにおいても同じで、例えばM10「Brose&Butter」のアイリッシュな感もあり中東っぽさもあり、そのハイブリットさの中で気持ち良くナチュラルにサビがやってくる感じとか、超お気に入りです。
「やっと追いついたと思った時には最後の曲」という感覚は大袈裟ではなく。このアルバムの最後に収められた「There is (always light)」は、おそらく岸田さんのパーソナルな感情がこのアルバムの中で特に表出していて、それが逆にとても普遍的に響く歌だと思います。最後にして人肌を一番感じられて、だから追いつけたというか、寄り添ってもらえた、あるいはこちらからやっと寄り添えたような感覚でしょうか。
<さよなら
やっぱりね 抜け殻だよ僕ら
あなたが残した 音楽も台詞も全然
普段使い
新しい景色にも
困難多き時代にも響く
どうなんだろう あなたは
なんて言うんだろう あなたは>
この曲に限らず、音楽をする人が音楽そのものについて触れた歌には、なんだか神聖なものが宿るように私は感じています。この楽曲と、インタビューやレビューでくるりの音楽へ対峙する姿勢を読むにつけて改めてそれを感じて、その神聖さとは音楽を生業とする人の音楽に向き合う誠実さや切実さ、音楽の歴史を尊ぶ精神からくるものなのだろうか、と思ったりもしました。
が、そんな事を考える前にとにかく涙が出て仕方なかった「There is (always light)」。ちょっと得体の知れない感動でした。吹奏楽を経験した身としては、大編成の吹奏楽で演奏してみたい、してほしいなぁとも思った、オーケストレーション豊かな曲。余談。このMVが公開された時、聴いて泣きながらライブのチケットを確保しました。10月15日の仙台公演、楽しみであります。