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あることないこと

140文字以上はこっちで

くるり 『THE PIER』

音楽

THE PIER (通常盤)

THE PIER (通常盤)

しばしば、その参照される音楽の圧倒的な多様さや幅広さが「旅」に例えられるくるり。ですが『THE PIER』、私なんぞは古今東西のここはどこ?今はいつ?と困惑しながら何とか音を追いかけて、やっと追いついたと思った時には最後の曲、なんて1枚でした。出発地点は遥か昔の事だったような、それでいて一瞬の出来事だったような。音に連れられてめくるめく旅をさせてもらったアルバム。

これほど最後までわくわくが持続するフルアルバムは久しぶりだったなぁ… 最後に来て「まだ終わらないで!」と願うように強く思ったのは、ライブではよくあるけれどフルアルバムに対しては初めての感覚かも知れません。音楽のジャンルや歴史に疎い自分には詳細を分析しきれませんが、肌感覚でもわかるほどに詰め込まれた音の情報量。それは全体を通しても楽曲それぞれにおいても同じで、例えばM10「Brose&Butter」のアイリッシュな感もあり中東っぽさもあり、そのハイブリットさの中で気持ち良くナチュラルにサビがやってくる感じとか、超お気に入りです。

「やっと追いついたと思った時には最後の曲」という感覚は大袈裟ではなく。このアルバムの最後に収められた「There is (always light)」は、おそらく岸田さんのパーソナルな感情がこのアルバムの中で特に表出していて、それが逆にとても普遍的に響く歌だと思います。最後にして人肌を一番感じられて、だから追いつけたというか、寄り添ってもらえた、あるいはこちらからやっと寄り添えたような感覚でしょうか。



<さよなら
 やっぱりね 抜け殻だよ僕ら
 あなたが残した 音楽も台詞も全然
 普段使い
 新しい景色にも
 困難多き時代にも響く

 どうなんだろう あなたは
 なんて言うんだろう あなたは>

この曲に限らず、音楽をする人が音楽そのものについて触れた歌には、なんだか神聖なものが宿るように私は感じています。この楽曲と、インタビューやレビューでくるりの音楽へ対峙する姿勢を読むにつけて改めてそれを感じて、その神聖さとは音楽を生業とする人の音楽に向き合う誠実さや切実さ、音楽の歴史を尊ぶ精神からくるものなのだろうか、と思ったりもしました。
が、そんな事を考える前にとにかく涙が出て仕方なかった「There is (always light)」。ちょっと得体の知れない感動でした。吹奏楽を経験した身としては、大編成の吹奏楽で演奏してみたい、してほしいなぁとも思った、オーケストレーション豊かな曲。余談。このMVが公開された時、聴いて泣きながらライブのチケットを確保しました。10月15日の仙台公演、楽しみであります。