あることないこと

140文字以上はこっちで

VIVA LA ROCK 体験記

私のGWは、5月3日〜5日にさいたまスーパーアリーナで開催された VIVA LA ROCK でした。
雑誌「MUSICA」などを手掛ける音楽ライター・鹿野淳さん主催の都市型フェス。初日の感想ツイートなどを目にしつつ、大規模なフェスの初年度に色々な問題は付き物だろうと腹をくくった上での2日目からの参加でしたが、個人的には断然過ごしやすく、既存のフェスとは異なるカラーもある面白いフェスだと思いました。

エリアとして楽しかったのは VIVA LA GARDEN。けやき広場に準備されたGARDENは入場無料のスペースで、ライブやDJタイムもあれば埼玉グルメやフェス飯もあり、フットサルコートでボールを蹴る子ども達も、大きなイヌを連れて優雅に散歩中のおじさまもいるという、とてもフリーダムな一角。室内フェスですがご飯を食べにGARDENに出れば解放感を味わえてとても気持ちよかったです。3日間天候に恵まれたのも、特にこのエリアには良かった事ですね。

いわば音楽コミケである「オトミセ」は今後の展開に期待です。まばらに配置された出展者のテーブルと、観客があまり動線として利用しないエリアで、あの閑散とした状況は少し可哀想でありました…
あまりに人がいないので、見て回ろうにも気が引けてしまうくらいでした。ただ、いくつか課題がクリアされて本家コミケのように盛り上がったら絶対に面白い企画ですよね。ぜひ改善して続けてほしいなぁ。

メインの STAR STAGE、室内だけど陽の当たる VIVA! STAGE、アングラなライブハウスのような CAVE STAGE、けやき広場の GARDEN STAGE と雰囲気の異なるステージセッティングも良かったです。それぞれの位置関係と動線を把握してから動きやすくなった私は、数えたところ4日は11組、5日は12組も観ていました。その中から特に印象に残ったアクトをいくつか書きます。

ドレスコーズ
毛皮のマリーズから合わせても音源はほとんど聴いてこなかったしライブも初見でした。が!今まで観てこなかったことを後悔しましたね… ボーカル志磨遼平の立ち居振る舞いと、それを淡々と強かに支える楽器群。かっこよすぎました。曲間に長いことトライバルなビートを打ち続けるタームがあったのですが、演奏の確かさと志磨さんの魅せ方とで飽きることのない気持ち良いダンスタイムでした。
正直に言えば独特の声ゆえにただのイロモノだと勘違いしていたのですが、とんでもなかった。目も耳も釘付けでした。


クリープハイプ
これまでの幾つかの騒動を思うと、尾崎世界観の世界観はちょっと捻くれていて、ゆえにこのバンドは勘違いされやすく向かうところ敵だらけな印象なのですが、ライブでは圧倒的に強いのだと改めて思いました。私の好きな「NE-TAXI」は切ないコード感でシングルにはならなかった1曲ですが、それも彼らのフェスアンセムになっていたことが、客席の光景を眺めるにつけても嬉しかったです。

赤い公園
直前のクリープハイプから小走りでこちらへ。最初のロックチューンのあたりは見逃してしまったようですが、その後のポップチューン〜バラードの流れを観て、多彩というか実験的な音遊びをしっかりと演奏している様がすごいなぁと。「ふやける」のアウトロからそのまま狂ったように楽器を掻き鳴らしステージを走り回り、轟音の中を最後はひらひらと手を振りながら可憐に去っていきました。すごいなぁ。

the telephones
2日目のトリにしてこの日一番、彼らの地元・埼玉と、埼玉を開催地としたこのフェスへの愛をぶちまけていたのがテレフォンズ。アゲてアゲて、最後まで落とさないという彼ららしい流れにの最後には、「We Love SAITAMA the telephones × VIVA LA ROCK」と書かれた飛行船が客席上空を回遊するピースフルな一幕も。なんだか泣けました。素晴らしい祝祭ムードでした。

・The fin.
ルーツが洋楽にあっても、それを日本人の感性に沿うように落とし込んで曲を生むアーティストは多いと思うのですが、The fin.はもう洋楽そのもの。日本人なのに。私が無知なもので“洋楽”と超ざっくりとしか言えず申し訳ないのですが、それでも何度か海外アーティストの生音を聴いたことはありまして。数少ないその体験で必ず受けてきた出音への衝撃と、全く同じものをThe fin.の演奏からも受けました。圧巻。


・きのこ帝国
ライブは初見です。ボーカル佐藤さんの女声で引っ張る幻想的であり暗澹たる雰囲気もある音楽性に、厚みのあるノイジーなサウンド。惹きつけられます。陰陽のどちらかといえば陰の成分が強いバンドですが、披露された新曲「東京」がそこに光を射すような一曲で素晴らしかった!“あなたに出会えた この街の名は東京”というフレーズが心に残ります。

cero
きのこ帝国からの移動で途中から。ceroも音源からは予想もつかないようなアレンジでライブでこなしていくバンドですね。最後の「マイ・ロスト・シティー」の怪しさが大好きなのですが、そうかこの曲は5拍子にところどころ6拍子の変拍子だからみんな乗りづらいのだな、となぜか合点。

星野源
人懐っこいMCに、小躍りに、カツラ&グラサンに、「夢の外へ」冒頭の歌詞を思い切り間違えるズッコケに、終始笑わせてもらった星野源。バラード「レコードノイズ」をアウトロまでしっとりゆっくりと聴かせたあと、その余韻をぶった切り、拍手の隙も与えず「地獄でなぜ悪い」のイントロのカオスを鳴らした、あの瞬間がとても星野源らしく思わずニヤッとしました。

サカナクション
サカナクションがフェスで大トリをやると、それまでのアクトを全部飲み込んで回収していっちゃうのです。それくらいの全部乗せ、全部盛りな音と演出。エレクトロサウンドで客席をぐいぐい引っ張っていく「Ame(B)-SAKANATRIBE MIX-」は切に音源化希望です。“鹿野さんにとってのロックとはこのフェスなのかと。それに悔しいけど背中を押された気がする”というMCでも象徴されていた通り、とても感慨深げなステージでした。


初開催のフェスやイベントに出演するアーティストはどんな事を考えるものなのでしょうか。VIVA LA ROCK では、ステージをこなしながらもよく客席を見渡しながら“あ、ここは大丈夫だ”とフェスへの信頼を高めていくような表情をするミュージシャンが多かったように思います。初年度からそんな柔らかい空気のある稀有なフェスに参加できた私は幸運でした。今年で盛り上がれる事がほぼ確約されたこのフェスに、来年からはより多くの観客が集まってくるのでしょう。初開催の良き空気のまま、さらに飛躍していってほしいフェスでした。